レチノールの効果や選び方の正解は?万能薬はないからこそ、正しい知識が必要
2017年頃にシワ改善の有効成分になったレチノール。レチノールは正しく使用すれば、さまざまな肌悩みへの効果が期待できます。しかし、どんな成分にもリスクはあります。今回はレチノールについて解説してみたいと思います。
目次
レチノールってなに?
レチノールとは、ビタミンA(厳密にはビタミンA誘導体)の一種にあたります。ビタミンAは脂溶性ビタミンで、レバーやウナギなどの動物性食品に多く含まれており、皮膚や粘膜を健康に保ち、抵抗力を高め、酸化を抑えるといった働きがあります。
食品から摂取しやすい栄養素ですが、肌へ直接働きかけたい場合は、化粧品から取り入れるのがおすすめです。特に肌がごわごわしていたり、くすみが気になったりしていて、ピーリングでも満足できない場合は、レチノールを使うといいでしょう。
またビタミンAは、肌の健康に欠かせない成分です。もともと肌に存在していますが、紫外線などで減少してしまうため、日頃から意識して補給することが大切です。
ビタミンAを補給すると、肌のターンオーバー(生まれ変わり)を促進させる効果が期待できます。ターンオーバーが促進されると、古い細胞が剥がれ落ち、新しい細胞が生まれてくるサイクルが整い、シミやニキビ跡のケア、ニキビケアにもつながります。
しかし、ターンオーバーが早すぎると、未熟な細胞のまま肌表面に出てしまい、バリア機能が低下してしまう可能性も。細胞をしっかり成熟させ、肌のバリア機能としてしっかり守り切った後に、きれいにはがれ落ちるようにすることが理想です。
さらに、ビタミンAには、使用していると肌に赤みが出るなどの肌トラブルが起こることがあります。これはA反応と呼ばれ、肌のビタミンA不足や、レチノールの濃度が影響している場合があります。
レチノールの種類
ビタミンAが摂取されると、体内で働くために構造が変化します。その構造は、以下の3つに分けられます。
レチノールが皮膚に吸収されると、レチナールという段階を経て、最終的にレチノイン酸へと変化します。レチナールは、レチノールが酸化したもので、レチノイン酸になる前の段階のものです。レチノイン酸は、レチノールの50~100倍とも言われる強い作用があります。そのため、刺激が強く、A反応が起こりやすいのが特徴です。特にレチノールは化粧品に、レチノイン酸は医療用途で使われることが多いです。
このようにビタミンAには複数種類があり、化粧品や医薬品に配合される形によって、A反応の起こりやすさが異なります。
レチノールとレチノール誘導体の違い
レチノールとは、ビタミンA誘導体の一種とお伝えしました。
誘導体とは、有機化合物の母体部分はほぼ同じですが、安定性の向上と酸化防止対策のために、一部分だけを変化させた物質のことです。ビタミンA誘導体の場合は、ビタミンAを少し変化させた物質になります。
代表的なレチノール誘導体には、以下の3つがあります。
パルミチン酸レチノール | パルミチン酸を加えたもので、レチノールの不安定さを解消したビタミンA誘導体。安定性の高さから「安定型ビタミンA誘導体」とも呼ばれる |
プロピオン酸レチノール | プロピオン酸を加えたもので、レチノールと比べて、刺激が少なく、ゆっくりレチノイン酸に変化する。純粋なレチノールに比べ、肌への刺激が少ないことが確認されている。 |
酢酸レチノール | 酢酸を加えたもので、光や熱に弱く不安定なレチノールを、酢酸を加えて安定させたもの。レチノールと比べて、刺激が少ない。 |
これら3つはレチノールを安定化し、浸透を上げるために他の成分を結合させたもので、肌への刺激が弱く、A反応が起こることもほとんどありません。肌質に合わせてレチノールの刺激をコントロールすることが重要です。レチノールが使われている化粧品を選ぶ場合の刺激の強さの目安は以下の通りです。(刺激安定順)
パルミチン酸 > プロピオン酸 > 酢酸レチノール > レチノール > レチナール > トレチノイン
敏感肌の方やはじめて使う方は、パルミチン酸レチノールから試すことをおすすめします。
ちなみに誘導体ではない純粋なビタミンAを「純粋レチノール」と呼ぶこともありますが、「レチノール」と「純粋レチノール」「ピュアレチノール」は同じ意味合いなので、混乱しないようにしましょう。
レチノールで期待できる効果
レチノールには、以下のような効果が期待できます。
それぞれについて詳しく解説します。
シミの改善
レチノールは、シミに効果が期待できるため、エイジングケア商品によく使われています。
レチノールには肌の生まれ変わりであるターンオーバーを促進する働きがあります。ターンオーバーが活発になると、古い角質が取り除かれ、新しい肌細胞が生まれやすくなります。
シミの原因は、メラニン色素の蓄積です。紫外線や加齢の影響でメラニン色素が過剰に生成され、肌に沈着することでシミが目立つようになります。レチノールは、ターンオーバーを促進することでメラニン色素の排出を促し、シミを改善する効果が期待できます。
弾力、ハリの改善
レチノールは、弾力やハリの改善も期待できます。
肌の奥深くにある真皮層は、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸といった成分で構成されており、肌にハリや弾力を与え、みずみずしさを保つために欠かせません。
これらの成分を作り出しているのが「線維芽細胞」と呼ばれる細胞です。レチノールは、この線維芽細胞を活性化する働きがあります。線維芽細胞が活発に働くことで、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸がより多く生成され、ハリや弾力のある、潤いあふれる肌へと導きます。
さらにレチノールは、肌の保湿力を高める成分である「グリコサミノグリカン」の量も増やすため、より高い保湿効果が期待できます。
毛穴の目立ち、黒ずみの改善
毛穴の目立ちや黒ずみの原因の一つに、過剰な皮脂分泌があります。肌はビタミンAが不足すると皮脂が過剰に分泌されますが、レチノールはビタミンAの一種であり、皮脂の抑制が可能です。そのため、レチノールは毛穴トラブルの改善にも効果が期待できます。
また、レチノールには、ターンオーバーを促進する効果もあるため、古い角質や毛穴に詰まった汚れが排出されやすくなり、毛穴の改善も期待できるのがポイントです。
ニキビ、ニキビ跡の改善
ニキビも過剰な皮脂分泌によって引き起こされます。皮脂が過剰に分泌されると、毛穴が詰まりやすくなり、そこにアクネ菌が繁殖することで炎症を起こし、ニキビへと発展してしまいます。
レチノールは、皮脂の分泌量をコントロールすることで、アクネ菌の増殖を抑え、ニキビの発生を防ぎます。さらにターンオーバー促進作用によって、ニキビ跡を薄くする効果も期待できます。
レチノールは効果がないと言われることも
ここまで解説してきたレチノールですが、「レチノールは効果がない」という話を耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
レチノールはターンオーバーを促進させて効果を発揮する仕組みのため、即効性はありません。効果を実感するには、最低でもターンオーバーの周期である約28日〜42日程度の期間が必要です。ただし、使用中に肌に異常が出た場合は、使用をやめて医師に相談するようにしましょう。
また、レチノールは紫外線に弱いため、保管場所や使用するタイミングによっては効果を感じにくくなってしまいます。これはレチノールの製品に限ったことではありませんが、どんな化粧品、スキンケア用品も正しい使い方をすることが重要です。「せっかく買ったのになんかあまり変化が感じられないかも…」という方は、一度使い方を見直してみるのもいいでしょう。
レチノールを使用するときの注意点
種類によっては高い効果を期待できるレチノールですが、その分、使用する際は以下のポイントに注意して使用する必要があります。
- A反応に注意(ビタミンA反応、レチノール反応、レチノイド反応)
- 紫外線対策をしっかり行う
- 正しい使い方と保存を心がける
それぞれについて解説していきます。
A反応に注意(ビタミンA反応、レチノール反応、レチノイド反応)
レチノールには、肌の乾燥や赤み、かゆみといった副作用が出る可能性があります。これはA反応と呼ばれ、肌のビタミンA不足やレチノールの濃度が高いことが原因として挙げられます。
肌質によって合う合わないがあるため、特に敏感肌や皮膚炎の人は注意が必要です。敏感肌の方でレチノールを使用したい場合は、低刺激のレチノール(パルミチン酸など)から試すことをおすすめします。
紫外線対策をしっかり行う
レチノールを使用する際は、紫外線対策もしっかり行うようにしましょう。
レチノールを使うと、肌のターンオーバーが促進されます。しかしターンオーバーが活発になりすぎると、未熟な細胞のまま肌表面に出てしまい、バリア機能が低下してしまうことがあります。
肌のバリア機能は、外部の刺激から肌を守る大切な働きをしているため、バリア機能が弱まると紫外線の影響を受けやすくなり、シミやそばかす、肌老化の原因にもなりかねません。そのため、レチノールを使用する際は、日焼け止めを毎日塗るなど、紫外線対策をしっかりと行いましょう。特にA反応が出ているときは、より肌が敏感になっているため、いつも以上に紫外線対策に気を配ることが大切です。
正しい使い方と保存を心がける
レチノールは光や熱・空気に触れると壊れやすく、効果が失われてしまうデリケートな成分です。最大限の効果と肌への負担を減らすため、以下のポイントを守りましょう。
保管方法 | 直射日光の当たらない涼しい場所で保管し、開封後はなるべく早めに使い切ってください。変色したり、変なニオイがしたら、使用期限内でも使用を中止しましょう。 |
使用量・頻度 | 1日1回、夜のスキンケアに使うのがおすすめです。朝使う場合は、日焼け止めを丁寧に塗り、紫外線対策を徹底しましょう。 |
使用上の注意 | ピーリング剤との併用は、肌の状態を見ながら行いましょう。 |
レチノールは、正しく使えばさまざまな肌悩みに効果が期待できる成分です。ポイントを押さえて、効果的に活用しましょう。
レチノールが入っている商品の選び方
レチノール配合の化粧品を選ぶ際には、レチノールの種類と濃度を確認することが重要です。しかし、種類は成分表を見ればわかりますが、濃度は記載されておらず、問い合わせても教えてもらえないことも多いと思います。そのため、メーカーの考え方やこだわりも商品選びの参考にしましょう。
また肌〇としては、レチノールによる一時的なバリア機能の低下を補うため、レチノールの後にセラミド配合の化粧品を使用することをおすすめしています。
年代および性別による商品の選び方
レチノール配合化粧品を選ぶ際は、年齢や性別よりも肌質で選ぶことが大切です。肌が強い人は刺激が強いレチノールでも問題ない場合もありますが、敏感肌や乾燥肌の人は、刺激の少ないものからはじめ、肌の様子を見ながら使用するようにしましょう。
万能薬はないので、正しい知識を持って判断できるようにしましょう
これまで解説してきたように、レチノールは正しく使用すれば肌悩みに効果的な成分です。しかし、どんな成分にもリスクはあるということを理解しておきましょう。特に高濃度のものは、その分刺激も強くなるため注意が必要です。
レチノールの配合量は1%以下でも十分効果が期待できるので、「高配合」「〇%配合」といったキーワードに注目するのではなく、濃度の低いレチノールを長期的にじっくりと使い続けることを意識しましょう。もし、より早く効果を出したい場合は美容医療も選択肢のひとつです。
レチノールを選ぶ際は、必ず成分表を確認し自分の肌質に合ったものを選ぶように心がけましょう。特に敏感肌や乾燥肌の方は、「レチノール高配合」を謳う商品は避けたほうが無難です。
どんな成分でも万能薬はありません。正しい知識を持って、自分に合った方法を判断できるようにすることが大切です。成分への知識を深め、正しく使いながら自分にあったスキンケアを実現しましょう。
肌に「マル」な成分だけを使用した、スキンケアブランド「肌○(はだまる)」編集部によるwebマガジンです。
肌◯では、肌の「バリア機能」を整えて健康な肌を目指す、低刺激・高保湿のスキンケアシリーズを展開しています。敏感肌・トラブル肌で悩む方が、最後にたどりつくスキンケアブランドをつくりたいという想いから、スキンケアに関するさまざまな情報発信をしていきます。今後とも、どうぞよろしくお願いします。
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